プール監視員と心肺蘇生法

桜が咲いたと思いきや、もうすっかり汗ばむ季節となって参りました。弊社警備員の制服も合服になり、事務系社員もノーネクタイでの執務となりました。
夏に向けてプール開きの準備をされる学校様なども増えてきたのではないでしょうか。それに伴い、プールでの事故を防止するためのプール監視に携わる法人や団体様からの救命講習実施のご依頼を頂くこともございます。

プール監視については、他人から依頼を受け、さらに営利目的で行う場合には警備業務に該当し、警備業法という法律で様々な規制等を受けることになります(警備業務は、法で定められた「警備員」以外の者は実施できません)が、これに該当しないプール監視も世の中には存在します。例えば、夏休みのプール開放日の際にPTAがそのプールの監視を行う場合などです。
そのような方々がプール監視に従事する前に受けるトレーニングのほとんどは、心肺蘇生法に関するものではないでしょうか。しかし本当にそれだけでよいのでしょうか?

「プール監視員のスキル=心肺蘇生法」というイメージがありますが、心肺蘇生が必要な状態に陥らせない、すなわち事故防止のための「監視」が監視員の主たる任務です。心肺蘇生も必要なひとつのスキルではありますが、最も必要なスキルは「危険を予知し、その危険を防止するための措置を講じること」「いざ異常が発生した場合にはいち早くそれに気付き、対応すること」なのです。

では、十分な訓練を受けていない人がそれを成しえる事はできるのでしょうか?
こちらの映像をご覧ください。
これは海外のプールの映像ですが、たくさんの子どもが遊泳する中で、どの映像も途中で溺れた人が発生します。皆さんはそれに気付くことができるでしょうか?

https://www.youtube.com/watch?v=L0KTqPloUiU

https://www.youtube.com/watch?v=NycwxaU4GPw

https://www.youtube.com/watch?v=wNs90x6b8OI

多くの方はどこに溺れた人がいるのかわからないまま、映像中の監視員が飛び込み救出に向かったことにより異常に気付くことができたのではないでしょうか?
この映像では1~2分程度の間に「必ず溺れた人が発生する」という意識のもと映像を見ているので発見も可能かもしれませんが、実際のプール監視であれば長時間、さらにいつ異常が発生するかわかりません。プール監視というのはそれほどに難しい業務なのです。十分な訓練を受けていない人が監視を行っているプールで事故が発生・・・監視員はそれに気付くことができず、発見できたのは溺れた人が意識を失い水面に浮いてから・・・ということになってしまうかもしれません。

また、いざ溺れた人が発生したときに水中から救助を行うのもたいへんな技術を要することですし、心肺蘇生法に関してもいくつか注意が必要です。
その代表的なものは、「溺水傷病者は人工呼吸が不可欠」というものでしょう。

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以前にも何度かお伝えしていますが、人工呼吸を省略した「胸骨圧迫のみの心肺蘇生」は、心原性心停止(心臓に原因がある心停止)のうち、倒れたから時間が経過していない場合に有効な処置であり、呼吸原性心停止(呼吸に原因がある心停止)には推奨されないものです。血液中に酸素が残っていない状態でいくら胸骨圧迫を行っても効果はありません。
プール監視に携わる方は、人工呼吸スキルを身につけておく必要がありますし、立場場の責任で人工呼吸を繰り返し行う必要がありますから、フェイスシールド(キューマスクやレサコなど)ではなく、感染防止効果も高いポケットマスクを準備しておくできでしょう。

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人工呼吸用のマスクとしては、救急隊員等が使用するバッグバルブマスク(BVM)もあり、医療の専門家ではない市民でも訓練を受ければ手技を習得することはできます。
しかしバッグバルブマスクは厚生労働省から医療機器として承認を受けており、医師がこれを使用して人工呼吸を行えば診療報酬が算定される医行為となります。
医療の専門家ではないものの、日常的に人工呼吸を行うライフセイバーなどは伝統的に使用していることもありますが、医療の専門家以外の者の使用の可否に関する法的整備はなされていないのが現状です。対応義務のある市民であっても、積極的に備え付けておく器具ではないといえます。

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ボランティア等でプール監視を行う方のトレーニングの難しさや課題はご理解いただけましたでしょうか。
消防機関が行う90分の「救命入門コース」などを受講したからといって決して満足してはならないのです。
「電気ショックありき」な救命講習では、溺水による心肺蘇生傷病者の対応を行う場合に迷いが生じるかもしれません。呼吸原性心停止では、電気ショック適応にならない場合がほとんどだからです。(遊泳中に心原性心停止に陥り、結果として溺れた方など、電気ショックが適応となる方も中にはいらっしゃるかもしれませんが・・・)

また、実際の救急現場では、単なる心肺蘇生スキルのみならず、119番通報の実施や救急隊の誘導、まわりの児童の避難など、心肺蘇生スキル以外の面が対応の可否に大きく影響します。
実際にシミュレーション訓練を行ってみると、救急隊を入場させようとした扉が施錠されており、たいへんな時間を浪費したなどもありました。

みなさんのプールでの安全管理体制は十分でしょうか?
是非今一度お考えください。

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