月別アーカイブ: 2016年8月

「人工呼吸は不要」ではない! ~人工呼吸を組み合わせて行う心肺蘇生の必要性~

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人工呼吸はある程度の訓練が必要であり、効果的な人工呼吸を行うスキルを持ち合わせていない市民救助者には実施がなかなか難しいものです。また、見ず知らずの人に口をつけるということが抵抗となり、結果心肺蘇生自体が実施されなくなるというおそれもありました。漫画などで、異性の登場人物が倒れたので緊張しながら「人工呼吸を…」というシーンがしばしばありますが、人工呼吸はそう簡単にはできない、恥ずかしいといった感情が一般にはあることがここからも読み取れるのではないでしょうか。(真面目なツッコミをすれば、呼吸の評価もせずにいきなり人工呼吸というのはおかしな話ではありますが…ギャグとしての描写ですからそこは置いておきましょう。)

まわりに居合わせた方に、「せめて胸骨圧迫だけでも行ってもらいたい!」というねらいから、人工呼吸を省略した「胸骨圧迫のみの心肺蘇生」が近年普及し、市民救助者による心肺蘇生実施の件数も年々増加していますが、同時に誤解も広まっています。、「いまは人工呼吸は不要である」という考え方です。

そもそも胸骨圧迫のみの心肺蘇生を普及させた理由として、「傷病者に口をつける人工呼吸は難しく、心的負担にもなるため、人工呼吸に抵抗感がある救 助者が胸骨圧迫すら行わなくなることを防止する」「倒れた瞬間を目撃している心臓が原因の心停止(心原性心停止)であれば、血中に酸素があるため、胸骨圧 迫のみでも傷病者を救うことができる」というものがあります。胸骨圧迫のみの心肺蘇生はあくまで「倒れた瞬間を目撃している成人の心原性心停止」を対象 とした(我が国における心臓突然死の減少を目的とした)ものなのです。

しかし心停止はこれ以外の状態もあります。窒息や溺水などは呼吸停止から心停止に至る「呼吸原性心停止」ですし、子どもの心停止は圧倒的に 呼吸原性心停止が多いので、人工呼吸で血中に酸素を取り込ませないと、いかに胸骨圧迫を行っても脳のダメージを防止できません。このようなケースに対応すべき立場の方(プール監視員や学校 教職員、保育士など)は人工呼吸スキルも習得すべきなのです。
プール監視と心肺蘇生のあり方については、以前こちらでも記事を掲載しました。
http://www.tokai99aed.com/wp/2016/05/09/%e3%83%97%e3%83%bc%e3%83%ab%e7%9b%a3%e8%a6%96%e5%93%a1%e3%81%a8%e5%bf%83%e8%82%ba%e8%98%87%e7%94%9f%e6%b3%95/

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また、心停止から時間が経過した際も血中の酸素は消費されているので、人工呼吸を行わないといくら胸骨圧迫を行っても救命の効果は低くなってしまいます。これについては、金沢大学の研究チームが次のような内容の発表をしています。(http://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/37806

①過疎地域や高層ビル、交通渋滞の影響で救急隊到着に時間を要す場所で発生した病院外心停止例では、近くに居合わせた市民が自発的に胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた心肺蘇生を実施した場合の生存率の方が、他の心肺蘇生の方法に比べ顕著に高くなる。

②上記①のような地域において、市民が119番通報後に通信指令員の口頭指導を受けて胸骨圧迫のみの心肺蘇生を行った例は、心肺蘇生を行わなかった場合の1.5倍の生存率である。これに対し、市民が自発的に心肺蘇生(胸骨圧迫+人工呼吸)を開始した例は2.7倍の生存率があった。自発的に胸骨圧迫のみの心肺蘇生を行った例でも1.9倍であり、人工呼吸が重要である。

③市民に対して蘇生教育を行う医療従事者に人工呼吸の重要性を再認識させるとともに、質の高い胸骨圧迫と人工呼吸を行うことができる市民の養成などが求められる。

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救急隊の到着が遅くなるのは、郊外の地域だけではありません。都心部であっても、高層ビルの上層階や渋滞が激しい地区などでは、日常的に救急隊到着の遅れが発生します。そのような場所で心肺蘇生を行う可能性がある方は人工呼吸のトレーニングを受けるとともに、人工呼吸用デバイス(ビニル1枚のフェイスシールドよりも、写真のようなポケットマスクがおすすめです)を準備しておくことが求められます。

あくまで特定の条件に対し推奨される「胸骨圧迫のみの蘇生」の特性や条件を理解し、ご自身の職種や立場を考慮してどのようなトレーニングを受けるべきかをご検討いただくことが大切です。
AEDの設置導入のみならず、心肺蘇生等のトレーニングも東海警備にご相談ください。

東海警備のAED・BLSトレーニングサービス
http://www.tokai99aed.com/training.html

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AEDサイト http://www.tokai99aed.com/

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倒れた人がいたらすぐAED???~AED使用の条件~

先日、あるSNSでAEDの使用条件に関することが話題となりました。

投稿者の女性(看護師とのこと)が駅で倒れている人を発見。急性アルコール中毒と思われるが、徐脈で意識レベルが低下したのでAEDを使った。そうしたら通りがかりの女性(看護師?)に「AEDなんか使うな」「すぐ剥がして」と言われた・・・という内容でした。

これに対し、「AEDは心電図や脈を調べて必要がなければ動作しないので積極的に使うべき」「心電図や周囲の音を記録するので後で役立つ」「通りがかりの女性は何も知らないんだな」といった意見が多く寄せられました。
現場の状況を直接見たわけでも、当事者から直接話しを伺ったわけでもないので不明な点も多々存在しますが、この話題を踏まえ今回はAED使用の条件等について改めてお話しさせていただきます。
AEDの設置や販売を推進する側が書いた記事にしては否定的だなと感じられる部分もあるかと思いますが、AEDや救命処置について正しい認識を持っていただくためであるとご理解いただけると幸いです。

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“AEDを使ってよい場合・いけない場合”

ではまずAED(ZOLL AED Plus)の取扱い説明書を見てみましょう。(拡大してご覧ください)

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AEDを使用してよい場合は、「意識(反応)がない場合」、そして「正常に呼吸していない場合」とあります。これはすなわち「傷病者が心停止である判断した場合」ですね。(脈拍の確認は医療従事者のみ求められているものであり、市民救助者には必要ありません。)
これに対し使ってはいけない場合(禁忌)には、「意識がある場合」「呼吸している場合」「脈拍が確認できる場合」とあり、すなわち心停止に至っていない場合には使用してはならないことが明記されています。

救命率の向上を図るにはAEDを積極的に使用することを呼びかけるべきであるのでしょうが、そもそもAEDによる電気ショックは医師のみが許された行為であり、ある一定の条件を満たす場合については市民でも使用できる場合があるに過ぎません。
市民によるAED使用は、特定の法令で市民の使用が認められたのではなく、心停止傷病者を救うためにやむを得ず電気ショック(本来医師しか認められていない行為)を行うことは、条件を満たせば違法性を生じないことがうたわれたに過ぎません。ですから使用者はまず「正しい使い方」をしなければなりませんし、それ以外の使用法で何か事故が発生した際には違法性が生じる可能性も否定できません。

“AEDはどこまで判断ができるのか”

AEDは傷病者の心電図を解析し、ショックが必要な場合にしか電気ショックの手順には進まない・・・これは救命講習などでも説明がなされる部分ではないでしょうか。ここでAEDが判断しているのは、あくまで「電気ショックが必要な心電図かどうか」でしかありません。

(電気ショックが必要な場合に関する説明はこちら)
http://www.tokai99aed.com/wp/2016/02/19/%ef%bd%81%ef%bd%85%ef%bd%84%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8b%e9%9b%bb%e6%b0%97%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%82%af%e3%81%8c%e5%bf%85%e8%a6%81%e3%81%aa%e3%81%a8%e3%81%8d/

AEDは「傷病者の意識の有無」や「脈の有無」は判断しませんし、「ショックが必要か不要か」しか使用者には伝えません。電気ショックが有効ではない心停止(心静止など)の場合であっても、正常な拍動の場合でもAEDが発する音声は「ショックは不要です」でしかありません。

「でも、ショックが必要な場合にしか電気が流れないなら、意識や呼吸があっても念のため使えば良いのでは?」と思われるかもしれませんが、ここでひとつ問題が発生します。
脈のない心室頻拍(心臓が早く動きすぎて空打ちの状態)は電気ショック適応となりますが、循環が保たれている状態での心室頻拍も心電図の波形が同じとなるため、AEDはショックを行う流れに進んでしまうおそれがあるということです。過去にはこれで電気ショックが行われた例もあるようですが、これは機器の問題ではなく操作する人の誤りであるとされています。(BLSヘルスケアプロバイダーテキストより)

(ZOLL AED Plusの説明書から抜粋。赤線部分に該当する波形が「ショック必要」と判断されます)
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このような誤りを防ぐためにも、使用者はAEDの使用条件を把握し、正しい認識で使用頂くことが大切です。
なお、一部のAEDには周囲の音声を録音できる機能を有したものもありますが、現在一般の場所に設置されているAEDのほとんどは録音機能を有していない機種であり、ZOLL AED Plusも録音機能を有しておりません。(一般の場所にAEDが普及し始めた当時、録音機能を有したある機種が多く設置されたことからこのようなイメージが浸透したものと思われます)

“操作や判断は決して難しくない”

ここまでを読むと、AEDがとても難しい機器に思えてしまったかもしれません。
でも決してそんなことはありません。AEDは専門的知識がない一般市民でも簡単に使用できるよう設計されたものであり、条件を満たせばどんどん使っていただきたいものなのです。

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倒れた人の「反応」も「普段どおりの(正常な)呼吸」もない=心停止と判断した場合はすぐにAEDを使用してください。また、心停止と判断した際には直ちに胸骨圧迫を開始し、血流を作ることも大切です。

(これらの方法は、「動画でわかるZOLL AED Plus」をご覧ください)
https://www.youtube.com/watch?v=HtyVA3IdTzA

「倒れた人がいたらすぐAED!」では、貧血等で気分が悪くなり倒れた人も皆服を脱がされ、AEDのパッドを貼られてしまうことにもなりかねません。この点については是非正しい認識を持っていただきたいと考えております。

とはいえ、医療の専門家ではない方がいざ倒れた人に出会うと、慌ててうまく判断できないもの。
そのときはすぐ119番通報をして、消防官の指示を仰ぎましょう。
119番通報は携帯電話からでも可能です。最近の携帯電話はスピーカーモードが付いていますから、携帯電話を胸ポケットに入れたり傍らに置いたりして、消防官の口頭指導を受けながら心停止の判断や必要な救命処置を行ってください。

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